
SBS Conference2025 開催レポート
2025年11月6日、東京・渋谷の「SAKURA DEEPTECH SHIBUYA」(Shibuya Sakura Stage 12F)に、スポーツやビジネスの第一線で活躍する200名が集まり、Sports Business Summit Conference 2025を開催しました。主催は、株式会社ファンベースカンパニーと株式会社野村総合研究所(NRI)。共創パートナーとして、株式会社SCOグループ、東急不動産株式会社、ZeroBankX Pte. Ltd.が参加しています。
会場の顔ぶれは、とても多彩でした。大企業の経営者、スタートアップの起業家、金融機関やベンチャーキャピタルの投資担当者、そしてプロクラブの経営者など。ふだんは別々の場所で活躍されている方々が、この日はひとつの会場で「スポーツビジネス」をテーマに議論を交わしました。13時から18時30分まで、4つのセッション、国内初の表彰式、そして参加者交流会が行われ、プログラムが進むほどに会場の熱気は高まっていきました。
本レポートでは、「Sports Business Summit Conference 2025」(以下、SBS)の開催の様子を、当日の議論のポイントや第1回「スポーツビジネスアワード」の模様とあわせてお伝えします。
Sports Business Summit(SBS)とは
SBSが始まったのは、2018年。MALKA Global Partnersシニアパートナーの岡部恭英さんが立ち上げ、その後、日本の各地で開催を重ねてきました。スポーツと地域、そして産業をつなぎ、現場の知識や経験を共有する。それが、このコミュニティが大切にしてきた役割です。
10周年という節目を迎え、SBSは舞台を東京に移します。日本のスポーツビジネスは、成長している産業のひとつです。とはいえ、世界基準で見ると、世界に通用するビジネスのかたちは、まだ多くありません。この事実を正面から受け止めたうえで、最先端の知識を持ち寄り、より広い視点で語り合いたい。そこから新しいアイデアやビジネスのカタチが生まれる瞬間をつくりたい。聞いて終わるセミナーではなく、「動くこと」を前提にした共創型のコミュニティ。これがSBSの考え方です。
当日は、開会の挨拶から当日の進行まで、立ち上げ役である岡部恭英さんが、中心的な役割を担いました。

開催概要
- イベント名:Sports Business Summit Conference 2025
- 開催日時:2025年11月6日(木)13:00〜18:30
- 会場:Shibuya Sakura Stage 12F「SAKURA DEEPTECH SHIBUYA」(東京都渋谷区桜丘町1-2)
- 主催:株式会社ファンベースカンパニー、株式会社野村総合研究所
- 共創パートナー:株式会社SCOグループ、東急不動産株式会社、ZeroBankX Pte. Ltd.(五十音順)
- 参加者数:200名
セッションレポート
プロクラブの価値の測り方、世界基準の経営、スタジアムを中心にしたまちづくり、アスリートを起点とした価値づくり。4つのセッションが、それぞれちがう角度から、スポーツビジネスのテーマを掘り下げました。
Session 1|プロクラブの持つ”企業価値”とは
登壇:木村正明さん(株式会社ファジアーノ岡山SC オーナー/東京大学特任教授)

最初のセッションのテーマは、シンプルですが、とても大事な問いでした。プロクラブの「企業価値」は、何で測ればよいのでしょうか。
クラブはふだん、勝ち負けや順位で語られます。でも、ビジネスとして見ると、必要になる「ものさし」はまったく別のものになります。ファジアーノ岡山SCのオーナーであり、Jリーグの要職も務めてきた木村正明さんが、経営者としての経験と、大学での研究の両方の視点から、クラブの価値の測り方(バリュエーション)をわかりやすく整理してくれました。
ただ、話は数字だけにとどまりません。売上や利益だけでは表せない、地域とのつながり、ブランド、ファンとの関係。こうした「数字に表れにくい価値」を、どう評価に取り込むか。これは、銀行や投資家がスポーツにお金を出すときの判断にも、そのままつながります。日本のクラブが投資の世界ときちんと向き合うには、まず共通の言葉が必要です。冒頭から、業界が取り組むべき課題がはっきりと見えてきました。
Session 2|グローバル基準のプロクラブ経営
登壇:Philipp Wunderlichさん(Commercial Director, Red Bull Soccer Japan)/岡部恭英さん(MALKA Global Partners シニアパートナー、東京大学松尾研究所国際顧問、日本サッカー協会エグゼクティブ・フェロー)

セッション2のテーマは「グローバル基準」。英語によるセッションとなりました。年商2兆円を誇るRed Bullが、なぜ日本のクラブ経営にまで関わるのでしょうか。Red Bull Soccer JapanのコマーシャルディレクターであるPhilipp Wunderlichさんが、世界的なブランドがスポーツで価値を生み出すしくみを語りました。
聞き手は、ヨーロッパのサッカービジネスを長く見てきた岡部恭英さん。世界トップレベルの経営とマーケティングの考え方を、日本の市場に合わせてかみ砕いて説明していきました。大切なのは、スポーツのとらえ方です。スポーツを、ただのスポンサー先としてではなく、「ブランド体験」と「ファンのつながり」を生み出す大事な資産として位置づける。世界基準の経営が、どうやって地域に根づき、売上とブランド価値の両方を伸ばしていくのか。クラブにとっても、スポンサー企業にとっても、すぐに役立つヒントが多いセッションになりました。
Session 3|スタジアム・アリーナを軸にしたまちづくり
登壇:玉井雄介さん(株式会社SCOグループ 代表取締役会長)/小川太郎さん(株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント エリア開発部部長、株式会社エスコンスポーツ&エンターテイメント取締役)

セッション3では、話が「まち」へと広がりました。スタジアムは、もう試合をするだけの場所ではありません。周りのエリア全体を巻き込んだ大きな開発、いわゆる「スポーツコンプレックス」の中心として注目されています。
その代表例が、エスコンフィールドHOKKAIDOです。新しい球場をつくったことで、年間の来場者数は420万人になりました。しかも、その半分が試合のない日の来場です。これまでの常識をくつがえす数字です。この取り組みを引っぱってきた小川太郎さんと、不動産や地域開発にくわしいSCOグループの玉井雄介さんが、スポーツコンプレックスに参加する経営上の意味を語り合いました。スタジアムやアリーナは、地域の経済を動かし、まちそのものの価値を高めるエンジンになります。投資や開発の現場からの言葉は、どれも具体的で、説得力がありました。
Session 4|アスリートが拓く企業価値創造の可能性
登壇:宮本恒靖さん(日本サッカー協会 会長)/Minako Kentさん(日本航空 グローバルマーケティング戦略部部長、グローバル・ブランド&マーケティング担当)

最後のテーマは「アスリート」です。企業がアスリートに投資することには、どんな意味があるのでしょうか。元日本代表のキャプテンで、いまは日本サッカー協会の会長を務める宮本恒靖さんと、日本航空でグローバル・ブランド&マーケティングを率いるMinako Kentさんが、競技団体と企業、それぞれの立場から語り合いました。

アスリートは、企業の考え方や価値観を体現する存在であり、同時に、社会に影響を与える発信者でもあります。だとすれば、その関わり方は、短期の宣伝効果だけで終わる話ではありません。アスリートとの関係を、企業やブランドの価値づくりにどうつなげるか。スポーツの社会的な価値と、企業の経営をつなぐ視点が示され、「スポーツは成長エンジンである」というこのカンファレンス全体のメッセージを、力強く受け止める締めくくりになりました。
国内初「第1回スポーツビジネスアワード」がスタート
当日会場が大いに沸いたのが、第1回「スポーツビジネスアワード」の表彰式でした。「スポーツビジネスアワード」とは、スポーツ産業で経済的・社会的な価値を生み出し、業界の発展に大きく貢献した組織や取り組みを表彰する、国内で初めての試みです。表彰の前には、岡部恭英さんがアワードをつくった理由を説明しました。スポーツの価値を「見える化」し、産業としてきちんと評価する文化を、日本に根づかせたい。その第一歩としての表彰となりました。

プレゼンターを務めたのは、大のサッカーファンとして知られる小柳ルミ子さんです。スポーツを心から愛する小柳さんの登壇が、表彰式に彩りを添え、会場を大いに盛り上げました 。
賞は、次の3つです。
- スポーツビジネス大賞:経済的・社会的な価値を生み出し、スポーツ産業に大きな影響を与えた組織
- ライジングスター賞:産業の先駆者として、スポーツ産業に大きな影響を与えた組織
- NRI特別賞:NRIが推薦する、これから産業に大きなインパクトを与えそうな事業を行う組織
表彰式は、ライジングスター賞、NRI特別賞、そしてスポーツビジネス大賞の順に、大賞へ向けて盛り上がりながら進みました。
■ライジングスター賞|株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント


最初に表彰されたのは、株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメントです。エスコンフィールドHOKKAIDOの開業によって年間の収入を100億円増やし、来場者の半数が試合のない日に訪れるという、これまでにない成果を生み出しました。日本のスタジアムビジネスのお手本となった点が、高く評価されています。「世界がまだ見ぬボールパーク」をかかげ、球団を起点としたまちづくりの新しいモデルに挑み続ける先駆者です。
■NRI特別賞|NTTドコモ株式会社

続いてのNRI特別賞は、NTTドコモ株式会社が受賞しました。名古屋の「IGアリーナ」に運営の代表として参加し、2025年3月にファウンディングパートナー契約を結びました。同じ年の7月13日の開業では、APN IOWNやミリ波、アジアで初めてとなるWi-Fi 7などを取り入れ、公式アプリやdカードのしくみで、来場者の体験と収益の土台を大きく進化させました。スポーツと通信・決済を組み合わせ、新しい観戦価値と産業への広がりを生み出した点が、高く評価されました。表彰式には、同社執行役員の櫻井稚子さんが登壇しました。
■スポーツビジネス大賞|楽天グループ株式会社

そして、初代「スポーツビジネス大賞」に選ばれたのは、楽天グループ株式会社です。プロ野球とJリーグの両方でリーグ優勝を果たしたのは、世界でたった2社だけ。東北楽天ゴールデンイーグルスとヴィッセル神戸が成しとげた栄光は、Boston Red SoxやLiverpool FCの親会社に並ぶ快挙です。新しい発想の経営で、日本のスポーツビジネスを世界レベルへ引き上げた功績、そして、SBSがかかげる「グローバル基準」をまさに実践している点が、大賞の決め手となりました。
受賞した楽天グループの三木谷浩史さんからは、このようなメッセージが届けられました。「楽天イーグルスや、今年30周年を迎えたヴィッセル神戸などの取り組みが社会に良い影響を与えていると評価されたことに、感謝の気持ちを述べました。ファンや地域、ビジネスパートナーに支えられてきたと振り返りながら、これからも日本、そして世界のスポーツ界を元気にする存在であり続けたいと思います」。
経営層が交わる、参加者交流会
表彰式のあとは、参加者交流会が開かれました。スポーツビジネスを実践している人、これから力を入れていきたいと考えている経営層が、業界の垣根を越えて言葉を交わす場になりました。登壇者と参加者、大企業とスタートアップ、競技団体と投資家。ふだんは出会わない人どうしがフラットにつながり、次の「共創」の芽が、会場のあちこちで生まれていました。「動くこと」を大切にするSBSらしい、熱気あふれる時間になりました。



2026開催に向けて
アワードを伴う初めての開催であったSBS2025においては、共創パートナーやボランティアスタッフの方々に支えられ無事に全工程を終えることができました。改めて2025に関係した下さった全ての方々に感謝申し上げます。また、2026年開催に向けて期待の声も多く頂きましたので、SBSカンファレンスは更なるアップデートを目指してまいります。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。
以上
